はじめに|なぜ薬局にもセキュリティ対策が必要なのか?
ICT化の加速やオンライン資格確認の導入により、インターネットとの接続機会が増えた今、セキュリティ対策は薬局運営の「基本」になっています。

「うちは小さな薬局だから大丈夫」と思っていませんか?
実は、小規模医療機関ほどサイバー攻撃のリスクが高いと言われています。
- 処方箋・服薬情報
- 患者の氏名・住所・保険情報
- 従業員の氏名・住所
とはいえ、「何から始めたらいいの?」と感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、今日からすぐに取り入れられる簡単な対策を10個にしぼってご紹介します。
薬局で始めるセキュリティ対策10の基本
- パスワード管理の見直し
- ソフトウェア・OSの定期更新
- ウイルス対策ソフトの導入と更新
- メールの添付ファイル・リンクに注意
- USB・外部メディアの取り扱いに注意
- ネットワーク環境の見直し
- データのバックアップ体制を整える
- アクセス権限の設定
- セキュリティ研修・周知活動
- チェックリストで定期点検
🛡️ 1. パスワード管理の見直し
パスワードが流出すると、電子薬歴やレセコンなどに不正アクセスされるリスクがあります。
まずは 強力なパスワードの設定と管理 を見直しましょう。
🟥 やってはいけない例
「123456」や「password」など、誰でも推測できるパスワードの使用
🟦 これなら安心!
英数字+記号を含む12文字以上のランダムな文字列をパスワード管理ツールで保管
🖥️ 2. ソフトウェア・OSの定期更新
古いソフトやOSを使い続けると、セキュリティの弱点を突かれやすくなります。
業務用端末は、定期的な更新で安全性を維持しましょう。
🟥 やってはいけない例
更新通知を無視して放置 → 既知の脆弱性がそのまま残り、攻撃される可能性大
🟦 これなら安心!
Windowsやアプリの「自動更新」を有効にして、常に最新バージョンを維持!
🛡️ 3. ウイルス対策ソフトの導入と更新
マルウェアや不正なアクセスは、日々巧妙になっています。
信頼できるウイルス対策ソフトを導入し、常に最新の状態を保つことが重要です。
🟥 やってはいけない例
体験版のまま放置、または古いソフトを使用 → 新種のウイルスに無防備な状態に
🟦 これなら安心!
自動スキャン・自動更新ができるソフトを選び、最新のウイルス情報でしっかり防御!
4. メールの添付ファイル・リンクに注意

「なりすましメール」は年々巧妙化してます
【件名】重要:アカウントがロックされました
【送信元】support@amaz0n.co.jp
【本文】
平素よりご利用ありがとうございます。あなたのアカウントに不審なアクセスが検出されました。以下のリンクよりログインし、本人確認を行ってください。※24時間以内に対応がない場合、アカウントは無効になります。
上記のようなメールを受信した場合は、慌てずに以下の点を見極めることが大切です。
- 有名企業を装い、緊急性を強調してリンクをクリックさせる手口
- メールアドレスに微妙な違い(例:amazon → amaz0n)
- リンク先が公式ドメインではない
💾 4. USB・外部メディアの取り扱いに注意
外部から持ち込まれたUSBやSDカードには、ウイルスやマルウェアが仕込まれていることがあります。
不用意に接続せず、社内で定めたルールに従って取り扱いましょう。
🟥 やってはいけない例
自宅で使用していたUSBを業務端末に差し込む
🟦 これなら安心!
外部データはメール添付やクラウド共有に切り替える
🌐 5. ネットワーク環境の見直し
💡ルーター、初期設定のまま使っていませんか?
初期パスワードや設定のまま使用していると、外部からの不正アクセスやウイルス侵入のリスクが高まります。
薬局内のネットワークも“入口”から守ることが大切です。
🟥 やってはいけない例
Wi-FiのSSIDやパスワードが「admin」「12345678」など初期値のまま
🟦 これなら安心!
ルーター管理画面にログインし、パスワード・SSIDを複雑なものに変更
💽 7. データのバックアップ体制を整える
💡バックアップしていない薬局、意外と多いです
パソコンの故障やウイルス感染、災害などで突然データが消えてしまうリスクは、いつでも誰にでも起こり得ます。
大切な情報を守るために、日常的なバックアップの仕組みを整えることが重要です。
🟥 やってはいけない例
パソコンの中にしかデータがなく、定期的なバックアップをしていない
🟦 これなら安心!
自動バックアップ設定を使って、外付けHDDやクラウドに定期保存
🛡️ 8. アクセス権限の設定
💡全員が全データにアクセスできる状態は危険!
業務に関係のないスタッフまで重要なファイルにアクセスできる状態では、
情報漏えいや誤操作によるデータ損失のリスクが高まります。
必要な人が必要な情報にだけアクセスできるように、アクセス権限の見直しを行いましょう。
🟥 やってはいけない例
🔓 ファイル共有ドライブを「全員フルアクセス」に設定している
🔓 退職者アカウントの削除を忘れており、外部からもアクセス可能
🔓 管理者権限が複数人に付与されていて、変更や削除が容易に行える状態
🟦 これなら安心!
✅ フォルダごとに「閲覧のみ/編集可/管理者」などの権限を細かく設定
✅ 業務に応じたアクセス範囲だけを付与し、不要な権限は与えない
✅ 定期的にユーザーアカウントを見直し、不要アカウントは削除
✅ 管理者権限は必要最低限に限定し、責任を明確にして運用
クラウドサービス(Googleドライブ・OneDriveなど)には柔軟な権限設定機能があります。
「誰が・どの範囲まで・どのように使えるか」を定期的にチェックしましょう。
🎓 9. セキュリティ研修・周知活動
💡 対策を“知っているつもり”では防げません!
スタッフが実際に正しく行動できるようになるには、「知識」ではなく「習慣化」が重要です。
定期的な研修と周知活動で、セキュリティを“現場の文化”にしましょう。
🟥 やってはいけない例
研修を一度も実施しておらず、新人スタッフがUSBの取り扱いルールを知らない
🟦 これなら安心!
例えば:年1回の研修で事例を紹介しながら、ウイルス感染の危険性を共有している
📋 10. チェックリストで定期点検
💡 「やってるつもり」の落とし穴を防ぐ
セキュリティ対策は実施しただけで満足してしまいがちですが、
定期的な点検がなければ形骸化してしまいます。
管理薬剤師が主導して、月1〜四半期ごとにチェックを行いましょう。
🟥 やってはいけない例
対策がバラバラに進められ、誰が何を確認したか分からなくなっている
🟦 これなら安心!
管理薬剤師が点検を担当し、簡易チェックシートで全員の確認状況を見える化している
例えば、スタッフ向けに「パスワード再設定済みか?」「USB使用ルールを守れているか?」など
チェック項目を絞ったシートを作るだけでも、現場の意識が大きく変わります。
まとめ|「今できること」から1つずつ実践を
薬局に求められるセキュリティ対策は、年々高度化しています。
とはいえ、最初から完璧を目指さなくても大丈夫。まずは今回ご紹介した10項目のうち、「できそうなことから1つだけでも」始めてみましょう。
管理薬剤師として、現場の安全を守るための気づきと仕組みづくりが、何よりも大切です。